8月3日に開かれた第3回エンジン・バーチャル・レッスンを、EPCアンバサダー兼会員でもあるモータージャーナリストの島下泰久氏が体験。
果たして、運転の課題を克服することはできたのか?
文=島下泰久
ここのところレーシングスピードでクルマを走らせる機会が減って、自分の走りがどんどん切れ味を失っていると感じている。本当は練習に励みたいけれど、サーキットの走行枠と自分の休みを重ねるのは簡単ではない。
でも、それならシミュレーターという良い選択肢があるのが今の時代だ。実際に今回、ENGINE PREMIUM CLUB会員向けのプログラムを体験してみて、やはり求めていたものはここにありそうだと感じられ、嬉しくなった。
場所は新宿区某所のビルにあるHCギャラリーさん。そして講師として、プロドライバーとしてWECなどで多くの実績を残しているのみならず、コーチング技術でも定評のある澤圭太選手を迎えた、この贅沢なプログラム。まずはじめには、とにかくコースを周回するところから始まる。ちゃんとコースアウトなどせず1周できるのか、操作は的確かなどがここで見極められて、そこから実践的なコーチングが始まるのである。
HCギャラリーで使われているDrive-Xと呼ばれるシミュレーターは、ステアリングに伝わる反力感はじめ操作系のリニアリティが高く、これまであった苦手意識がおおよそ払拭され、違和感無く走りに集中できた。これは、まず好印象を抱いたところだ。
さて、では走りの課題は? 個人的に最近感じていたのは、絶対にクルマを壊してはいけないという職業柄、ターンインで速度を必要以上に落とし過ぎていて、おかげで進入からの姿勢づくりがうまく行かないなということだった。
そこはやはりさすがで、私の数ラップを見ただけで澤選手は課題を見抜き、ブレーキングと、そこから踏力を抜きながらターンインに繋げていくところを集中的に教えてくれる。しかも、シミュレーターだけに失敗してコースを外れてもクルマを壊すようなことはないから、思い切って色々試せる。おかげで、周回を重ねるに連れてちょっとずつ勘が戻ってくる感覚を得ることができた。もちろん、まだまだちょっとずつ、ちょっとずつ…ではあるけれど。
今回、改めて実感したのは、シミュレーターは単に何周も乗るだけでは、スキルアップには繋がりにくいだろうなということだった。そうではなく、今回の澤選手のように人の走りを客観視して、実際のサーキットで起こることも把握しながら的確なアドバイスができるコーチの下で、自分の走りの課題を明確にしながら走ることこそ、上達への近道であることは間違いない。
シミュレーターのメリットは、タイヤもオイルも減らず、リスクも小さいから何周でも気軽に走らせられるということだけでない。自分の走りを客観視してもらい、本当に効果的なトレーニングを行なうことが容易だということこそ挙げるべきだと思う。
運転技術を磨きたいけれど、時間を作るのが難しいという人は昨今、少なくないと思う。こうしたシミュレーターの、そしてドライビングコーチのニーズは今後もっと増えていくはず。ENGINE PREMIUM CLUB会員諸氏は、せっかくの機会を活用して、楽しくスキルアップに励んでほしい。私もできれば通いたい!