今年から、これまでのエンジン・ドライビング・レッスンに加えて、エンジン・レーシング・レッスンを開催することになった。インストラクターは澤圭太氏。その第1回にポルシェ911カレラ4S(996 型)で参加した。
文=村上 政(本誌) 写真=神村 聖
ドライビング・レッスンとレーシング・レッスンはどう違うのか? 結論から言ってしまうと、目指すところは変らない。つまり、いかにしてクルマを思い通りに動かすか、その技術を学ぶという点ではまったく同じである。しかし、同じ山の頂上を目指すのにも登山ルートはいろいろあるように、運転技術の習得にもいろいろなアプローチの仕方がある。
エンジン・レーシング・レッスンでは、現役のレーシング・ドライバーである澤圭太選手にチーフ・インストラクターをお願いして、より実践的な観点からサーキット・ドライブの基本を、安全に学べるようなカリキュラムを組んでもらっている。レッスンの舞台は富士スピードウェイの大駐車場。そこにパイロンを使って様々なコースを設定して、1台ないし2台ずつ走行練習する。サーキットを多くの台数で走る時のような追い抜きもないから接触事故の心配もないし、飛び石のリスクも極めて低い。午前中は2班に分けて小さなコースを1台ずつ走行、午後は大きなコースを2台ずつ走行するが、参加台数は最大16台なので、1日でかなりの距離を走ることになる。
さて、その記念すべき第1回が2月19日に開催された。朝の天候は雨。というより、ほとんど嵐に近かった。そんな中、まずは座学からスタート。澤選手が掲げたテーマは「上手くなるのを上手くなる」というもの。コツを掴んで上手に頂上までのルートを見つけて登ろう、とでも翻訳すればいいのか。そのための具体的な課題として、①操作、②空間、③調整の3つが提示された。すなわち、①アクセル、ブレーキ、ハンドルの操作の強弱をコントロールすること。②視野を広く持ち、目からの情報処理で、クルマがどの位置でどこにいてどういう方向を向いていればいいかを考えて走ること。③どこでどのくらい操作をすればクルマがスムーズに動いてくれるか、操作のタイミングと量を状況に応じて合わせていくこと。そんな感じだろうか。
午前中は、まずフルブレーキングとコントロール・ブレーキングを練習した後、オーバル・コースと8の字コースを走行。このレッスンではエンジン・ドライビング・レッスンとは異なり、オーバルでも積極的にアウト・イン・アウトのライン取りをして、より実戦的なレーシング・ドライブを学ぶ。何周か走った後、インストラクターが運転しての同乗走行はもちろん、逆に自分が運転するクルマの助手席にインストラクターが乗る逆同乗走行もあるので、運転の欠点や悪い癖をその場で指摘してもらい、すぐに修正できるのが、このレッスンのもっとも上達に繋がるキモと言えるかも知れない。
午後は駐車場の広さいっぱいを使った大きなコースを、少しレイアウトを変えて2種類走ったが、時間が経つに連れてどんどん天候が良くなり、最後はほぼドライの状態で走ることができた。フルウェットとドライでは、こんなにもクルマの挙動が違うということも安全な場所でしっかり体験できて、参加者のみなさんも学ぶところの多い1日に満足してくれたようだ。次回は7月17日に開催予定。ぜひ、参加してみて下さい。