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2022.10.26

3カ月の期間限定で、ランボルギーニ・ウラカンEVOに乗ってみた! (その1 蛍光イエローの猛牛、艦隊入り!)

いまや絶滅危惧種となった自然吸気V10エンジンをミドシップに縦置きする、これぞスーパーカーと言うべき1台。

誰もが振り返るランボルギーニ・ウラカンEVOが編集部にやってきた。

文=村上 政(本誌) 写真=柏田芳敬

「7月下旬までの約3カ月間、ウラカンEVOの広報車を長期リポート車として使いませんか?

そんな夢のような話が、ランボルギーニから編集部に舞い込んできた。二つ返事でハイと答えたいところだが、ふだん取材で拝借する時でさえ、置き場や扱い方に細心の注意を払わなければならない超高性能にして超高額のスーパーカーである。どうしたものか二の足を踏んでいたところ、青空駐車で構わないし、出来るだけ普段使いして乗ってみて欲しい、と背中を押されて、それならばと引き受けることにした次第である。

で、諸々の手続きを終え、長期リポート93号車となるそれを引き取りに行って目を瞠らされることになった。イエローの個体とは聞いていたが、まさかこんなに派手な蛍光イエローとブラックのツートーン・カラーを纏っているとは!

徹底的に低く、幅広く、キャビン・フォワード。アゴを擦らないよう細心の注意が必要だが、幸いにも長期リポート車はフロント・リフター付き。

実はこれ、一昨年登場した〝フルオ・カプセル〟という特別仕様車で、フルオはイタリア語で〝蛍光〟を意味し、イエローのほかにオレンジやブルー、グリーンのボディ・カラーがある。このイエローの名前は〝ジアーロ・クラルス (GIALLO CLARUS)゛ 、すなわち〝輝けるイエロー〟 。 まさに目立つために選ばれた色としか言いようがない。

いや、このイエローだけではなく、ルーフやエンジン・フードを始め、ドア・ミラー、ホイール、下回りといったところにマット・ブラックが配されているところが、さらに派手派手しさを倍増していると思う。

というわけで、乗り始めてすぐに感じたのは、道行く人たちの視線である。一体、何が現れたのか、というUFOでも見るような目で振り返ったりしている。クルマだけではなく、どんな奴が乗っているのかと、こちらの姿まで窺っているように感じるのは、私の自意識過剰だろうか。〝いや、違うんです、これは借り物で私のではありません“と思わずつぶやいてしまうような小心者が乗るクルマではまったくないということを、早くも悟った次第である。

荷室はスーパーカーとしては望外の容量。背後にV10を背負い、ルーフも低くタイトなキャビンだが居心地は上々だ。

果たして、この視線に3カ月でどれだけ慣れるかは、長期リポートのひとつの課題にしてもいいだろう。

さて、それはともかく、ウラカンに乗るのは数カ月前にSTOの広報車に試乗して以来だが、意外なことに、ほとんどレーシングカーのような成り立ちを持つSTOよりも、このEVOの方が乗り心地は硬く感じた。STOはこのEVOよりもさらに足回りの熟成が進んでいたということなのだろうか、あの乗り心地のしなやかさは特筆すべきものだった。

それに比べると、こちらはいかにもスーパーカーらしく締め上げられた足を持っており、路面の荒れをダイレクトに伝えてくるが、とはいえダンピングが効いていて揺れは一発で収まるから不快ではない。それどころか、これは640馬力もあるスーパーカーとしては、望外の乗り心地の良さと言うべきだろう。

熟成の極み、という言葉が頭に浮かんでくる。ウラカンは2013年に登場した時から、すでに前任車のガヤルドで重ねた10年の進化を受け継いだ完成度の高いクルマだったが、さらに9年を経て、磨きに磨き込まれたことが、少し乗るだけですぐ伝わってくる品質感の高さがある。

足回りだけでなく、ボディの剛性感も、ハンドリングのリニアリティも、内装の上質感も、すべてが文句なしの出来映えなのだが、その中でもひときわドライバーを心躍らせるものを挙げるとすれば、背後で低く大きな唸り声をあげている自然吸気V10ユニットであるに違いない。 自動車界が100年に一度の変革期を迎え、電動化の波が押し寄せる“いま・ここ”において、もはや絶滅危惧種となっている自然吸気多気筒エンジンを心ゆくまで味わえる幸せ。3カ月間、その感触をじっくりと身体に刻み込みたいと思っている。

ENGINE 2022年7月号 掲載