NEWS

新着記事
2022.10.26

フェラーリ296GTS、鈴鹿サーキットでお披露目

先進性とクラシックの類まれなる融合。

フェラーリ初のV6ハイブリッド・ミドシップの296シリーズにオープン・モデルのGTSが登場。国内初お披露目された。

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=フェラーリ・ジャパン

『エンジン』9・10月号の表紙にもなっているフェラーリ初のV6ハイブリッド・パワートレインをリア・ミドシップに搭載した296GTB。そのスパイダー版となるGTSが、このほど日本に上陸、4年ぶりに開かれたフェラリスティの祭典「フェラーリ・レーシング・デイズ」(6月25~26日、鈴鹿サーキット)でお披露目された。

驚いたことにこのGTS、ルーフを閉じた姿はベルリネッタのGTBと見間違えるくらい酷似している。ところが、最高45km/hまでなら走行中でもわずか14秒で開閉可能なリトラクタブル・ハードトップを格納すると、写真でご覧のような、いかにも青空の下で走らせたら最高に気持ちよさそうなスパイダーの姿に変身するのだから、ひと粒で二度おいしいとはまさにこのことだろう。

先進的なエアロダイナミクス・デザインを取り入れたフロント・マスクやリア・エンドを持つ一方で、モチーフを1963年の250LMから引用していると謳うだけあって、Bピラーから後ろのフィンがついたトンネル・バックのスタイルや、サイド・エア・インテークから盛り上がったリア・フェンダーあたりの造形にはクラシックな香りが濃厚に漂っている。その先進性とクラシックの融合具合は、まさにイタリアならではの芸術的な名人芸を見せられているような絶妙なさじ加減だ。

しかも、その中身はといえば、リアのバルクヘッド部分に7.45kWhの容量を持つ高電圧バッテリーを搭載し、電気モーターのみでも25kmの航続距離を実現しながら、その一方で、120度のバンク角を持ち、その内側にふたつのターボチャージャーを抱え込んで最高出力663psという高出力を誇る新開発のV6ユニットを搭載したハイブリッド・モデルとなっているのだから、これまた先進的なEVテクノロジーとこれまで磨き上げてきた内燃機関の技術の粋とが見事に融合しているのである。

すでにフェラーリは、2023年から25年の間に15台の新型車をデビューさせること、初のフルEVは2025年に登場すること、2026年までに内燃機関が40%、ハイブリッドとフルEVが60%という構成比とすることを発表しているが、鈴鹿でインタビューに応じたフェラーリ・ジャパンのフェデリコ・パストレッリ社長は、今後のフェラーリの変わるものと変わらないものは何か、という質問に、こう答えてくれた。

「今後、EVの比率が多くなって行くことは間違いなく、その点ではフェラーリは大きく変わっていくでしょう。しかし、我々が大切にしているフェラーリの魂については今後もまったく変わりません。すなわち、歴史と伝統を踏まえながらも、常に先進の技術を追求し、最高の価値あるものを作り上げていくということ。そのDNAは永遠に変わることはないのです。たとえフルEVの時代になっても、フェラーリの哲学は変わりません。比類なき性能もエモーショナルな要素も、たとえば長い間エンジニアたちが研究開発を進めてきているサウンドについても、登場したらきっとみなさんはビックリされることでしょうが、フェラーリがエモーショナルなスポーツカーであるのをやめることはないのです」

果たして、どんなエモーショナルなフェラーリEVが現れるのかは今後のお楽しみとして、それでもやはり、いま目の前にある296GTSが放つ魅力は一時代の頂点にある、と私には思えてならなかったのだ。

全長×全幅×全高=4565×1958×1191mm。ホイールベース=2600mm。2992ccのV6ツインターボは663ps /740Nmを発生。システム最大出力=830ps。4313万円(税込み)。

インタビューに答えるパストレッリ社長。鈴鹿サーキットには約1000人のフェラーリ・オーナーが集結した。

ENGINE 2022年9月10月号 掲載